自宅では、別口が待ち構えていた。
「ねえ火梛君。 どこか観たい所はなーい?
明日私が案内するわ。 もっとカッコイイ服も買いましょう」
通りすがりの旅人だということは 疑っていないらしい。
しかし、父さんの服は 自分で買ったものだろうに尖沙咀牙醫。
久しぶりに ドーナツが食べたくなって作っていたら、
母さんが擦り寄ってきて、火梛を誘った。
ドーナッツは 唯一の得意料理だ。
近頃は、台所を粉だらけにして怒られるようなこともなくなった。
私は揚がったドーナツに砂糖を振り掛ける作業を終えた。
「いや、ユンと一緒がいい」
言いながら私を見たが、気のせいだろうか、
無愛想な顔が、ふわりと解けた尖沙咀活動場地。
だんだんと なつかれている気がする。
だが 母さんの顔を見て、ぎょっとした。
表情は変わらないものの、瞳から星が消えている。
まずい。 この感じは良く知っている水原共生。
葱坊主の親玉を買ってきた時よりも機嫌が悪い。
家電製品のお知らせ音に呼ばれて、母さんが部屋を出て行くと、
思わず食卓にぺたりと顔をつけた。
「……ああ……また………… ヤキモチを焼かれる」